
「かわいいが暴走して、阿鼻叫喚」
そんなポップでシュールなキャッチコピーを引っ提げて登場した映画『サブスタンス』。
デミ・ムーア主演、コラリー・ファルジャ監督による本作(2025年5月16日公開)を年始一発目に鑑賞しましたが……正直、ものすごい衝撃を受けました。
最高に面白い。
けれど、怖すぎて2回目は観られない。
でも、記憶には強烈に焼き付いて離れない。
そんな本作について、ネタバレ全開で語っていきたいと思います。
※ここから先は映画の結末を含むネタバレがあります。
「ホラー」の枠を超えた、生理的な「グロ」描写
本作はジャンルとしては「ホラー」に分類されますが、幽霊や呪いといった超常現象的な怖さではありません。心理的なグロテスクさと、肉体的な痛みがこれでもかと詰め込まれた、サイコホラーやスプラッタに近い作品です。
特に印象に残っているのは、やはり「人の中から人が出てくる」という衝撃的な背中の描写。
……なのですが、私の脳裏に最もこびり付いて離れないのは、意外にも「プロデューサーが海老を食べるシーン」です。
あのシーン、本当にキツくありませんでしたか?
口の中に入った咀嚼物が見えるアングル、油でギトギトになった手や口周り。 カメラワークも音響も技術が一級品だからこそ、スローモーションで聞こえる「ニチャァ…」という音や飛び散る液体の質感がリアルすぎて、生理的嫌悪感が凄まじいことになっていました。
「注射器」が象徴する痛みと依存
そしてもう一つ、直視できなかったのが「注射器」にまつわるシーンです。
本作において、サブスタンス(=若さを手に入れる薬)を使うための注射器は、事あるごとに登場する最重要アイテム。
身体を安定させるため、脊髄液を抜くため、入れ替わるため……。
何度も何度も映し出される「皮膚や血管に針が刺さる描写」は、単なる医療行為を超えて、何か取り返しのつかない一線を越えていくような痛々しさを伴っています。
膿んでボロボロになった背中に、それでも針を突き立てるシーン。 あれは単に痛いだけでなく、「痛みを伴ってでも、何かを得ようとする執着」を見せつけられているようで、観ていて心が削られる思いでした。
老いることへの根源的な恐怖
主人公のエリザベスは、50歳を迎えた誕生日に「年齢」を理由に番組を降板させられます。
「次は若くて美人な女を用意する」。その残酷な通告が、すべての始まりでした。
エリザベスの分身である「スー」が若さを武器にスターダムを駆け上がり、際どい衣装で自身の価値を見せつける姿は、かつての健全なエアロビクス番組とは対照的です。
しかし、それが大衆にウケて大ヒットしてしまう現実。
この映画が描く恐怖は、スプラッタな映像だけではありません。 「老い=価値の喪失」と見なされる社会への恐怖であり、私たちが心のどこかで感じている不安そのものです。
(後編へ続く)



